制作への想い

手描友禅染の道に足を踏み入れ、半世紀が過ぎました。

振り返りますと、常に絵とともに歩んできた人生でした。


私の原点

私は愛媛県の伊方町という小さな田舎町に生まれました。

故郷を思い描くと浮かんでくるのは、みかん畑とはるばると広がる海の情景です。


私の幼少期は、遊びといったらもっぱら野山を駆け回ること。

しかし私は運動が苦手で、引っ込み思案なこどもでした。

唯一脚光をあびたのが絵を描く時間です。友人のリクエストに答えて様々なものを描きました。


”絵を描いて人に喜びを与える”


これが私の人生の指針となっていきました。


京都の染色業界へ

進路に迷っていた高校3年生のとき、京都の手描友禅染の仕事を紹介されました。

絵を描く仕事を志していた私は、チャンスとばかりに染色業界に飛び込みました。


昭和40年代は着物が売れに売れていた時代。

ライバルに負けないよう、常に技術を磨くことを考えていました。

当時の京都府立植物園では、着物図案業の見習い達がこぞって写生をしていました。

私も仲間たちと肩を並べ、一心不乱に写生を行いました。


より素晴らしい着物を作るため、皆がみな切磋琢磨していた良き時代でありました。


▽書きためたスケッチ


新しい表現を目指して

35歳で独立し、作家活動を始めました。

風光明媚な土地で知られる嵯峨嵐山に工房を構え、四季折々の自然を描いた作品が数多く生まれました。


また、お客様のリクエストに応えるうちに、モチーフの幅がどんどんと広がっていきました。

”絵を描いて人に喜びを与える”という原点が、常に私の原動力となっているのです。


これからも新しい発想を心がけ、「京友禅の現代美」を追求してまいります。


木戸源生